8月25日(日)開催「アルンディ」のお知らせ
テーマ:松尾匡、新刊『反緊縮社会主義論』発表記念講演学習会
会 場:京都市地域・多文化交流ネットワークサロン (Googleマップ)
京都市南区東九条東岩本町31 ℡075-671-0108
日 時:8月25日(日曜日)午後1時30分開場 2時開始
報 告:松尾匡 立命館大学経済学部教授
(松尾先生の提案)
松尾匡の新刊著『反緊縮社会主義論―脱成長論と帝国主義の超克』の内容を概説し、参加者の議論の種とする。
なぜ経済停滞が続き大衆の生活水準が低迷するのか。にもかかわらずなぜ政府は債務を気にして手をこまねくのか。なぜ中小企業や個人事業者の淘汰路線が推し進められているのか。なぜ自衛隊の海外展開への歯止めが崩されていっているのか。なぜウクライナ侵攻やガザ虐殺が起こるのか。なぜ東アジアの緊張が高まるのか。本書はこれら現代における諸々の現象に、経済の分析から一貫した説明を与え、民衆の立場からの体制変革の展望を提起するものである。
日本国内的な発展段階要因としては、人口減少時代の到来により、日本国内への資本蓄積が必然的に低迷する時代になったことがあげられる。資本蓄積にともなう信用創造が、実需を伴う貨幣を世に創出してきたのだから、このことは政府による貨幣創出なしには景気が低迷することを意味する。日本資本主義は、もはや利潤をあげない国内産業は淘汰して資本蓄積せず、アジア諸国に進出して低賃金労働を搾取して資本蓄積を進める道に生き残りをかけている。
世界資本主義の発展段階要因としては、新自由主義の段階が終わり、世界の地域的な経済圏が分立して、それぞれを牛耳る相対的大国が裁量的国家動員でそれを支える、地域帝国主義間抗争の時代が到来しつつあることが指摘できる。東南アジアへの企業進出が進む日本も、その投資秩序の維持のために、経済協定や武器輸出、究極には自衛隊の派兵でこれを担う体制を構築しつつある。この結果、行きつくのは、ごく少数者だけがコントロール権をにぎり、日本とアジアの多くの大衆がコントロール権を奪われて、一方的な操作の対象となってのみ生きることができる世の中である。
これに対置するものとして本書では、政府による貨幣創出によって、すべての民衆に雇用と社会サービスを保障して、民意に基づくマクロな総労働配分をコントロールするもとで、職場と生活圏を民衆一人一人がコントロールする自主的事業が広がっていくべきことを提唱している。